井上靖と宮崎市定

文豪井上靖氏は、中国史学の泰斗宮崎市定教授と、京都大学(当時の京都帝国大学)文学部の同年輩か、それに近い関係にあります。

当時の文学部、それも東洋文学(或いは史学)を専攻する者は少数で、風変わり者扱いされていたと宮崎教授自らが語っているくらいですから、少なくともお互いに面識があった筈です。

井上氏は卒業後、新聞社勤務を経て小説家となり、数々の名作を著していますが、注目すべきはその遺作とも言うべき「孔子」です。


井上氏としては、やはり東洋史学に対する特別な思い入れがあったのではないかと思います。

そして本作は、かつて青春のひと時を共有した仲間達に対する、一種の惜別或いは告別の書ではないかと推測されます。

故あって東洋史から距離を置く人生を送ったが、決して想いは薄れていなかったことを、かつての学友に告げたかったのだと思います。

人と人との結びつき、それは「評論」すべき類のものではなく、「実感」すべきものではないのでしょうか。

(了)
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by dokkyoan | 2008-06-07 21:48