レバノン

小山茂樹氏の名著「レバノン」(中公新書)。

中東を理解するための格好の入門書であるだけでなく、今でも立派に通用する内容を持つ書籍です。


レバノンを見ていると、日本に生まれたことの幸せ、有難味を痛感せざるを得ません。

近代国家、ひいては先進国に脱皮するための必要条件として、国家主義の高揚、国民国家の成立が挙げられます。

日本の場合、明治維新を経て成立しましたが、その前から土壌があったからこそ、国民国家に変貌しえたのです。

レバノンの場合、その要件を著しく欠いていました。


「モザイク国家」「分裂国家」の称号が代名詞となっているレバノンでは、宗教、民族が複雑に入り組み、これでよく国家としてひとつに纏まっていることに、むしろ感心せざるを得ないのです。

あと、指摘するとすれば、レバノンはやはり部族国家の域を出ていません。

忠誠心が国家へ向かわず、所属する部族に収斂する間は、近代国家に衣替えすることは出来ません。

部族国家こそが、近代国家と対称をなす概念であり、近代国家への発展を阻む最大の要因です。

ですから、「近代国家でなければ部族国家」と仮定すると、ほとんどの国は近代国家にすら辿りつけていないのです。


レバノンのもう1つの不幸は、隣国シリアの存在です。

シリアはレバノンの自国領とみなしていますので、大使館すら置いていません。

そのシリアが都度介入した結果、今のレバノンがあるのです。

しかも、レバノンは分裂国家である故に、干渉を歓迎する勢力が、必ず存在します。


今のレバノンには、元首(大統領)が存在しません。前大統領の任期満了後、各派が反目して大統領不在の事態が長期にわたって続いています。

おそらく、本当に分裂すると思われます。

(了)

追記
古代中国春秋時代に関心を持ち、下記ブログを執筆しています。

真説「春秋」
(http://oneshikou.exblog.jp/)

真説「論語」
(http://twoshikou.exblog.jp/)

真説「孔子」
http://threeshiko.exblog.jp/)
[PR]
by dokkyoan | 2008-02-16 16:04