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世を毒する言動、空疎な報道・社説・論説等に遠慮仮借なく鉄槌を下します。


by dokkyoan

報怨以徳(以徳報怨、或いは以徳報暴)

満州事変から太平洋戦争まで戦ってきた日本人の「対外感情」は、相手国によって微妙に違います。

米国に対しては完膚なまでに叩きのめされたので、その点では納得出来るのですが、やはり人的及び物的損失は国民の心を癒すうえで障害となって今に至っています。

現在も少なからぬ報道媒体で「反米論調」が幅を利かせているのは、「戦争で米国に負けれ悔しい」と言う感情と、終戦直後の混乱と屈辱、それでいながら米国に従属したことで展望が開けたことへの喜びと戸惑いがないまぜになって、心中で整理出来ていないのです。

ですから米国人に対しては「敗戦は受け入れ難い事実であり、多くの日本人がそれ故に反米感情を抱き、米国の衰退を秘かに望んでいる。しかし今の日本を容認したのも米国であり、安全保障を初めとする諸条約を完璧に遵守するのみならず、米国が本当に苦しんでいる時は全身全霊を以って助ける」と言えば、感情と行動を区別出来る米国人は理解してくれると思います。

英国やフランスは内心、日本に負けた意識があり、しかも「持たざる国」に敗れた「持てる国」ですから、その衰えを殊更、声高に主張するまでもないでしょう。

ロシア(旧ソ連)はいずれ崩壊します、その時に領土問題は決着させましょう。


蒋介石が二流政治家でないことは、日本の敗戦に際して「大日本帝国軍の蛮行を怨まない訳ではないが、それについては大国として矜持を以って対処する」との発言によって、日本人に軍事力では優っていたものの、精神面では及ばなかったと言う意識を植え付けた点からも理解出来ます。

日本人も己が「暴」であったことは百も承知、「喰って行けない」と言う切実にして悲痛な国民世論が、軍部を大陸進出に駆り立てたのです。

ですから日本は加害者であることを重々認識していますし、兎に角、良心は腹が一杯になってから取り出そうと考えていましたが、敗戦とそれに続くこの蒋介石発言で、「相手の方が大人」と認めざるを得なくなりました。


勿論、蒋介石も慈善事業家ではありませんから、そして日本が再び立ち上がらない保証もありませんから(現実に経済大国として甦りました)、日本人の対国民党感情を徒に刺激するのは愚策ですし、蒋介石の「小中華主義」からすれば、日本は中華の圏外で大人しくしてくれればそれで充分と言う結論になります。

ですから所謂「列強」の内、日本は敗戦国のうえに「蒋介石を憎みし者」にはなり得ません。

勿論、中国戦線でも多数の死傷者を出していますが、蒋介石発言はそれを補って余りある内容でした。

米国は対日戦で疲労困憊、そもそも戦争目的が「全体主義陣営の覆滅」であって「東アジアの赤化防止」ではありませんから、枢軸国の一角たる日本を占領出来れば、それで目的は達成出来ます。

換言すれば、それまで「門戸開放政策」などと言いながら、中国市場への参入を果たそうと散々、あの手この手を駆使してきた米国が、大英帝国(香港を死守、上海のHSBC支店も業務継続)に切実の面影無く、残るソ連は蒋介石と手打ち、中国共産党を見放しています。

この好機に中国を自己の「縄張り」に強いて編入しようとせず、放置しました。

米国の本当の狙いは日本だったのではないか、そんな妄想すら浮かび上がってきます。

(続く)
by dokkyoan | 2011-05-28 11:02